Since 1873

  • 久万造林は,とても長い歴史があるとお聞きしました。

    久万造林株式会社は、明治6年(1873年)私の高祖父である井部栄範(いべえいはん)という人物が愛媛県久万高原町の寺の山に杉の苗を植えたのが始まりです。

    栄範は和歌山県生まれでもともと高野山で僧侶をしていた人物でしたが、四国巡礼八十八か所の四十四番札所大寶寺に移り、明治維新という大きな転換期を機に転身、菅生村(現在の久万高原町菅生)に杉や檜の植林をはじめ、地場産業や公共事業の重要な基盤を築き上げたと言われています。 今年は創業からちょうど150年という節目で、久万造林にとって大事な年を迎えました。

    お祖父様は森づくりに始まり,さまざまな形で地域に貢献をされた方だったのですね。もともと豊かな森が存在していたと思っていましたが,そんなに地道な活動があったのですね。

    愛媛県の久万(くま)は標高1,000mの高い場所にあって、木やさまざまな植物が育ちやすく、豊かな自然に恵まれた土地ではあります。

    ただ、意外に思われるかも知れませんが、高祖父が植林を始めた創業当時の頃は、今のような緑豊かな生い茂った森の姿が最初からあったわけではありませんでした。栄範をはじめ、事業に携わった当時の人々が一本一本苗を植え、長い時間をかけて森を育てていったのです。

    まさに、一本の苗から始まったと。

    そうです。なかでも久万は、昔から良質な杉や檜を育てるのに適した地だったんですね。杉にいたっては、吉野杉で有名な奈良・吉野から栄範が苗木を買い、この地に植えていったと言われています。

    そうした背景もあり、久万は林業が盛んな土地になりました。今では愛媛県の基幹産業のひとつとして知られています。

    栄範が大切にしていた言葉で「志を立てて、しっかり取り組めば、まわりの人たちも協力して動いてくれる」という意味の「至誠動天」がありますが、まさにこの言葉を地で生きた人物だったと思うんですね。

    最初は「一本の苗木を植える」という、いわば小さな一歩からのスタートだったわけですが、そこから時間をかけて、大切に森を育てていった。さらに栄範はこの事業を起点に、公共事業の発展や銀行の創設などにも関わるなど、地元の人々に働きかけ、協力を得ながら地域の発展のために尽力したことは、大きな功績だったと思います。

    とくに「森を育てる」となると、苗を植えて今日明日にできるわけではなく、少なくとも50年、100年先の未来を考えなければ、決してできないことですから。

森の暮らしが透けてみえる

  • そういう中で、「森を育てて未来につなぐ」という思いを届けたいと始められたのが、「MOTOMO KUMA」ですね。ブランドの立ち上げ背景や思いについて、お伺いできますか。

    シンプルに、森の暮らしを伝えたいと思ったことが最初のきっかけです。ふだん森にあまりなじみがない方に、手に取ったり日常的に使っていただくことによって、シンプルに森を思い起こしてもらえるようなきっかけを作りたいと思いました。

    とくに都心に暮らしている方は、自然に触れる機会も限られています。そういう方にとっても商品を通じて、ふとした瞬間に森を感じてもらえることできればと。

    「MOTOMOTO KUMA」が、森を知ってもらうための最初のきっかけになればいいですね。

    それが、「森が透けてみえる暮らし」というコンセプトにもつながっているのですね。「MOTOMOTO KUMA」は、ツリーレザーを使った様々なアイテムを展開されていますね。ツリーレザーは、つまり「木の皮」ということですよね。すごい発想ですよね!

    「森が透けてみえる暮らし」というメッセージを伝えようと思った時に、どんなプロダクトが良いだろう?と試行錯誤する中で、徳島県で木材の壁紙を作っていて、ユニークな取り組みをされている会社さんとの出会いがあったんです。

    すごく面白いなと思って問い合わせをしたところ、オリジナルもできると言ってくださって。早速お願いすることになりました。

    杉檜をコンマ2ミリくらいに薄くスライスしてシートにしていただいたのですが、それがまるで本物の皮のような質感で。どこかなめしのようにも感じられる柔らかさ、紙のような風合いがあるんです。

    実際には木なんだけれども、これまで出会ったことがないような独特の手触りに感動しました。「これはいい!」と思って、デザイナーさんとも相談しながら試作品を10種類くらい作ってもらうことになりました。 そういう中で、カードケースやファイル、マネークリップなどが、徐々にカタチになっていったんです。

    ―――驚くほど柔らかくて、レザーのような質感がありますよね。それでいて木のぬくもりや優しさが感じられて、触れるとホッとする安心感がありますね。

    ありがとうございます。レザーのようでもあるけれど、実際に触れてみるとやはり「木」だとわかるんですね。それから、木は自然なので、アイテムも一点ずつ微妙に表情も違うということも面白くて、ふたつとして同じ木肌のものは存在しないのも特徴です。

    皆さんに手には取っていただいて、木や森のことを思い出してもらえることだけでも僕らは満足。嬉しいことですね。些細なことかもしれませんが、そこから森との繋がりが徐々に広がっていくと思います。

GOLDEN FOREST

  • もう一つ、このブランドを立ち上げるベースとなるプロジェクトがあったそうですが、その取り組みについてもぜひ聞かせてください。

    はい。これは「黄金の森プロジェクト」というもので、今から10年ほど前、久万造林が100周年を迎えたタイミングでスタートしたプロジェクトになります。

    大事な節目の時期にあってこれまでを振り返ってみた時に、「これまで私たちは先人たちが培ってくれたもの、森という自然から多くの恩恵を受けてきた」、 それを踏まえて、「自分たちが次の新しい100年をつくるためにこれから何ができるのだろう、何を残せるのだろう?」と真剣に考えたんですね。

    これまでの100年の恵みに心から感謝をしつつ、これからの100年をどうしていくか?

    そういう思いで集まった有志とともに新しい林業のかたちをつくっていこうと決めて、舵を切ったプロジェクトになります。

    大自然の新しい周期の始まりにあると。森もまた新しいサイクルの中で、次の100年をつくるための重要な転換期に入った、ということですね。

    はい。高祖父が森づくりの一歩を踏み出した当時と今とでは、木が置かれている環境はもちろん、市場のあり方も大きく様変わりしています。そうした中で次の100年を考えた時、森に元気な木が生えていること、しかもそれが人工ではなく自然植生する状態を目指していくことが、大事な条件だと思いました。

    そこで、全体の50%を杉檜に、そして残りの50%はクヌギやナラと全体のバランスを見直して、多種多様な種を植えていくことによって、100年後も森は生き続けることができるだろうと考えたんです。

    現在の森は、杉檜が80〜90%を占めていますが、バランスを変えて多様性に満ちた森を目指していきたいと。それが森にとっても、市場にとっても理想的なあり方だと考えたんです。

    大変興味深いです。地道な活動で、きっとさまざまなご苦労もあると思いますが、時間はかかっても自然はいずれ応えてくれるのでしょうね。

    そうですね。信じて、一歩ずつ進むことが大事だと思っています。高祖父の残してくれた「至誠動天」の精神を継ぐ思いで。

    実は、この活動はすでにこれからに繋がるような企画の芽が出始めているんです。

    たとえば、植樹イベントを行ったり、子どもたちをカフェスペースに集めてワークショップをして植物に親しんでもらう機会を作ったり。

    他にも、森の使える場所をテストフィールドとして、宿泊できるスペースや社員研修の一環として使っていただけるようなプランも考えているんです。

    林業に携わる方ばかりでなく、一般の方もふつうに森に入っていただく機会を増やすことで、森と自然につながれる機会を提供していくのが理想ですね。

    そうやって森と関わる人が増えていくことが、これからの新たな林業の可能性を開いていくと信じています。

VISION

  • ワクワクするようなビジョンを聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、メッセージをお願いします。

    ふだん森にはあまり馴染みがないという方もいらっしゃると思いますが、黄金の森プロジェクトでは、小さなお子さまから大人まで、どんな方でも森に入って楽しんでいただけるようなさまざまな企画を考えています。

    ぜひ「MOTOMOTO KUMA」の商品を通じて、森の暮らしを感じ取っていただけたら嬉しく思います。

@motomotokuma